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オスカー4冠「パラサイト」に隠された日本人は知らない「韓国“下剋上”社会の常識」 現地記者が解説

金 敬哲 2020/02/23 17:00


 英語以外の作品として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画「パラサイト 半地下の家族」。半地下の部屋で貧しい生活を送るギテク(ソン・ガンホ)の一家と、IT企業を経営する裕福なパク社長一家の対比が描かれているこの作品には、日本人には分かりにくい韓国ならでは事情が登場する。
 先に公開した文春オンラインの記事(「 アカデミー賞作品賞『パラサイト』を観たら知りたくなる韓国“不平等”社会『5つの疑問』に現地記者が答える! 」)に引き続き、韓国国外の観客にはわかりにくいポイントについて紹介したい。(*以下の記事では、映画の内容が述べられていますのでご注意ください)

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疑問1 なぜ韓国でボーイスカウトは人気があるの?
 インディアンに憧れるパク社長の息子は、カブスカウト(小学生ボーイスカウト)に加入している。ギテクの息子で、パク社長の家で家庭教師として働くギウも、映画後半でボーイスカウト出身であることが明かされる。ボーイスカウトは韓国でそんなに人気なのだろうか?
 1908年に英国で創設されたボーイスカウトは、現在170カ国で運営されて、韓国でも約13万人の青少年が活動している。具体的には野外活動などを通して冒険心とチームワークを育むほか、多様なボランティア活動も行う。
 このボーイスカウトが韓国でポピュラーなのは、中高や大学の入学試験で大事な「スペック」となっているからだ。
 スペックとは、入試や就職に必要な資格やスキルのこと。韓国では、難関の中・高校でもペーパーテストなしで、選考は「内申書」と「自己紹介書」だけというところがほとんどで、最も重要な資料となる「自己紹介書」に書き込めるクラブ活動やボランティア経歴が必要になる。ボーイスカウトの活動歴は、その一つとなるのだ。また内申書対策としても、「ボランティア活動」で内申点が得られるため、一挙両得になる。
 ただ最近、ボーイスカウトは人気を失いつつある。野外活動などで時間を使うボーイスカウトに対して、試験勉強だけでも大忙しの子供たちの時間をさらに奪われると考える親が増えているためだ。
 ボーイスカウトで得られるボランティア活動の内申点も、むしろ短時間で終わる社会団体の活動の方が効率的だと思われている。さらに、大学入試の自己紹介書を廃止する改革案が教育省から発表されており、実際に廃止となればボーイスカウトの人気はさらに下火になるだろう。
 興味深いのは、半地下に住む一家の息子であるギウが、ボーイスカウト出身という点だ。ボーイスカウトは1年の会費だけでも数十万ウォンに達し、ユニフォーム代や日々の活動費、海外研修費など、親にとっては相当な経済的負担になる。
 無職の両親と半地下部屋で暮らしているギウが幼い頃ボーイスカウトだったという設定は、この家族が最初から貧困層なのではなかったという伏線だと言える。


疑問2 ギテクが失敗した「台湾カステラ屋」「チキン店」って何?
「半地下の家族は、最初から貧困層なのではなかった」という背景は、一家の大黒柱、ギテクの過去からも窺える。
 ギテクは過去、2度も商売に失敗し、無職になった。一つはチキン店で、もう一つは台湾カステラ屋だ。ギテクが選んだこの2つの業種は、特別な技術がなくてもある程度の資金さえあれば、フランチャイズで簡単に店を始められるという共通点がある。
 まず、フライドチキンを扱う「チキン店」は、韓国で最もポピュラーな外食店だ。開業する場合、材料や調理マニュアルはすべてフランチャイズの本社が提供し、内装業者も本社が紹介してくれる。店舗を確保し、フランチャイズ費用さえ支払えば、誰にでも開業できる。統計によると、2019年2月時点で韓国のチキン店は約8万7000店もあり、マクドナルドの全世界の店舗数の約2.4倍にもなるという。その分、競争は熾烈だ。
 一方、「台湾カステラ屋」は、台湾・台北近郊の淡水区の有名なお土産で、その場で焼きたての大型カステラを切り分けて販売する。台湾では「シフォンケーキ」と呼ばれているが、日本のカステラに似ていることから、韓国では「台湾カステラ」と呼ばれている。
 台湾カステラ屋も初心者が簡単に開業できることで知られ、フランチャイズなら本社で1週ほど製造手法を学んだら、すぐに開店できる。単一品目しか扱わないので管理も容易である。韓国では2010年代半ばに起きた「台湾ブーム」で人気を集めるようになり、2016年には韓国国内に17種類のフランチャイズが存在し、計400店が営業していたほど人気を集めた。
 しかしブームから1年ほど経った2017年、卵、小麦粉、牛乳、砂糖以外は何も入れないことが売りだった台湾カステラに、食用油と添加剤を使用していたことがテレビ番組で暴露されて、飽和状態だった台湾カステラ屋は、急激に衰退。いまではほとんど店舗を見かけなくなった。台湾カステラ屋は、韓国で最も短期間で消えた外食産業として知られている。
 韓国の自営業者は全雇用形態の約25%を占め、日本の2.5倍に達している。OECDの平均の17%より8%も高い。その理由は、企業からリストラされた中年男性が、最も簡単に再就職できる飲食業など零細自営業に流れているからだとされている。
 ギテクも企業に勤めて、ある程度の水準の生活をしていたにもかかわらず、退職後にきちんとした準備もないまま、初心者にもできる「チキン店」「台湾カステラ屋」のフランチャイズ店に手を出したことが窺える。ギテクの2度にわたる失敗で、家族は半地下での生活にまで落ちてしまったのだろう。
 この中高年の「チキン店」をめぐる悲哀については、拙著『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書)でも詳しく解説している。


疑問3 パク社長夫人は、なぜ英語を交えて話すのか?
 パク社長の妻、ヨンギョが言葉の端々に英語を交えて話すことに、疑問を持った人もいるだろう。それも彼女が使う英語は、簡単な単語や文章ばかり。
 ヨンギョの中途半端な英語交じりの話し方は、自然に身に着いたというよりは、意識的に自分の知的レベルを高く見せようとする一種の「背伸び」なのだ。
 韓国社会において英語を話せるかどうかは、「能力」というだけでなく「身分」を示す意味合いもある。
 1993年、韓国では金泳三政権の「世界化」という旗印の下、英語教育ブームが起きた。さらに、2007年に当選した李明博大統領は、「貧困の連鎖を防ぐために、学校で英語をきちんと教える」として、英語教育強化を推し進めた。
 その結果、「英語格差」という言葉が登場するほど、所得水準によって英語教育は二極化するようになった。2019年の統計によると、未就学児童に対する英語教育費用は、富裕層が暮らす教育熱の高い江南地域が、他の地域より約20倍も高くなるほどだ。
 ヨンギョを演じたチョ・ヨジョンはインタビューで、ポン・ジュノ監督から次のような説明を受けていたことを明かしている。
「ヨンギョは大学2、3年生の時に妊娠して、すぐに主婦になった。夫の社会的地位に歩調を合わせたいと努力している」
 ヨンギョは上流社会出身ではなく、成功した夫のおかげで上流層の一員となったため、その地位にふさわしい人間であるように振る舞うために、英語交じりの話し方が必要だったのだ。


疑問4 パク社長が飲んでいる謎の飲料の正体は? 家政婦が作った「チャパグリ」とは?
 グローバルIT企業のCEOであるパク社長は、帰宅後はルーチンのように真っ先に冷蔵庫に近づく。そして冷蔵庫のドアを開け、謎の飲み物を取り、その中身をがぶがぶと飲み干す。
 パク社長が飲むこの飲み物は、「生脈散(センメクサン)」という漢方薬の一種だ。映画に漢方薬を提供したという漢方病院の説明によると、生脈散は夏バテを予防して元気をつける漢方薬で、高麗人参、五味子、ヤブランなどの材料が入る。
 パク社長だけでなく、多くの韓国人が日常的に漢方薬を飲んでいる。特に病気のためではなく、一種の強壮剤として、健康を守るための習慣となっている。パク社長が飲んでいた生脈散は30包で10万ウォン(約9200円)だという。上流層が好んで飲む、鹿の若角や麝香など高級材料が入った健康薬は1包で数万ウォンを上回るものも多い。
「パラサイト」で最も有名になった料理は「チャパグリ」だ。チャパグリとは、インスタントラーメンメーカーの農心が作った2種類のインスタント麺「チャパゲティ」と「ノグリ」との合成語だ。
 韓国発の中華料理であるジャージャー麺「チャパゲティ」と、韓国式の辛いうどん「ノグリ」を混ぜて料理するので、ちょっぴり辛いジャージャー麺の味がする。作り方は、熱湯に2種類の麺を入れて5分ほど煮た後、湯切りして、チャパゲティとノグリのスープを入れて混ぜるだけ。
 ヨンギョは、富裕層らしく高価な韓国産牛「韓牛」をトッピングしていたが、庶民は韓牛の代わりに目玉焼きやチーズなどをトッピングして食べている。


疑問5 格差社会を描いた「パラサイト」の成功を、韓国人はどのように受け止めているか?
 作品賞を始めとした主要4部門でアカデミー賞を受賞した「パラサイト」の成功は、韓国社会に大きな喜びを与えた。日本はもちろん、アジアのどの国でも成し遂げられなかった今回の快挙は、韓国が誇る「K-コンテンツ」の底力を世界に示した“事件”とみなされている。「映画界のノーベル賞を取った」などの表現が登場したほどだ。
「パラサイト」フィーバーは、4月に総選挙を控えた韓国政界にまで拡大している。文在寅大統領は、ポン・ジュノ監督をはじめとするパラサイトチームを大統領府の昼食に招待して、映画の中の人気メニューである「チャパクリ」でもてなした。
 この席で、文大統領は、「映画が見せてくれた社会意識について深く共感する」「不平等を解消することを最大の国政目標としているが、反対も多く、早く成果が現れないので焦れったい」と、自分の経済政策をアピールした。
 総選挙に出馬する候補の間でも、「『パラサイト』マーケティング」が人気を集めている。ボン監督の故郷、大邱(テグ)地域から出馬する候補らは、「ポン監督の生家の保全」「ポン・ジュノ博物館建設」「ポン・ジュノタウン造成」などを公約に掲げている。与党「共に民主党」も、「第2のポン・ジュノを育成する」として、多彩な文化産業育成政策を党の公約として掲げている。
 しかし、このフィーバーに便乗して、ソウル市が映画のロケ地を巡る「パラサイト」ツアーを観光商品として売り出していくというニュースが流れると、韓国社会では「貧困ポルノでは?」という反発が出た。
「朝鮮日報」によると、映画に登場した庶民の住む町のモデルとなっているのは、麻浦区阿?洞(マポグ・アヒョンドン)の一帯。その付近の住民の間では、「我々に貧民層だと烙印を押した」という反発が出ているという。進歩政党である正義党は、声明を出し、「パラサイトのロケ地を観光コースとして開発することは、貧困の風景を商品化し、展示の街にするということだ。それ以上でも以下でもない」と批判した。
 海外メディアが韓国の「半地下」住居の取材に熱を上げる姿に対しても、批判が集まっている。「韓国社会の格差問題への拡大解釈を警戒するべきだ」という主張も出始めている。
 韓国最大の通信社「聯合ニュース」は、「半地下部屋は、かつて一時的に広がったが、今は歳月とともに消えつつある住宅の類型。これを改めて韓国の貧富の格差を示す証拠であるかのように拡大解釈するのは適切でないという指摘が出ている」と伝えている。大きすぎる海外からの反響に、メディアや国民の間にも戸惑いがみられている。
(金 敬哲/週刊文春デジタル)




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