俳優としても歌手としても活躍する松たか子。歌舞伎俳優の娘に生まれ、10代の頃から脚光を浴びてきた。順風満帆に見えるキャリアの中で、「俳優とはいてもいなくてもいい存在」とどこか冷めた思いも抱いていたという。芝居と育児に奮闘するいま、心境が少し変わってきている。かつてなぜそう思い、何が変化をもたらしたのか。(取材・文:内田正樹/撮影:岡本隆史/Yahoo!ニュース 特集編集部)
(文中敬称略)


『アナ雪』ブームを実感した瞬間
高く明るい女の子の声が部屋の中で響いている。松たか子は2007年に結婚、2015年に娘が誕生した。ちょうど週末に当たった取材の日、松は娘と連れ立って現れた。松はNODA・MAPの最新作公演『Q』:A Night At The Kabukiの稽古期間中だった。「最近、あまり一緒にいられないから寂しがって」と言うと、自分から離れて遊ぶ娘の方を見て笑みを浮かべた。
松の父は歌舞伎俳優の二代目松本白鸚(はくおう)、兄も同じく十代目松本幸四郎である。さらに姉の松本紀保も女優という芸能一家で、母(藤間紀子)だけが裏方として一家を見守ってきた。
「母はとても普通の人。 私の奮闘を見兼ねてか、時々アドバイスをくれます。『お母さんはね、とにかくにこにこ、のんびり、おおらかにしていればいいの。お母さんがキーキーしていると、子どももそれを察しちゃうから』とか。思い返すと、確かに母がキーッとなっている姿って、ほとんど記憶にない。すごく甘かったわけでも、厳しかったわけでもなく、誰に対しても同じ温度で飄々(ひょうひょう)と接していた。私も、母としてそういられたらと思いますけど」
以下続きあり・・